手書き戸籍を翻刻するときの1行

手書き戸籍の1行は、原文、読み、自信度の3列で翻刻します。
原文に無い語を、読みの列で補いません。自信度は、高、中、低のどれか一つです。
この記事は、ご自身の直系のご先祖の手書き戸籍を、1行ずつ写す人に、その3列を渡します。古文書の読み方の全体は古文書の読み方・解読にあります。字と字を並べる3列は戸籍の旧字体を、いまの字と並べて残すにあります。ここでは、切ったあとの1行だけを扱います。
3列
1行につき、表の1行です。ページ全体を、一つのマスには入れません。
| 列 | 書くもの | 書かないもの |
|---|---|---|
| 原文 | 紙に見えた字を、見えた順のまま。読めない字は□ | 読みの語。いまの字への直し。補った助詞 |
| 読み | その原文を、いまの文として読んだもの。原文にある範囲だけ | 原文に無い年、地名、続柄 |
| 自信度 | 高、中、低のどれか一つ。低と中には、理由を同じマスのうしろへ短く | たぶん、の文。二つの段階の併記 |
原文の□は、1字につき1つです。何字か分からなければ、□の数を推測で揃えません。「□が続く。字数不明」と、原文のマスのうしろに書きます。字数不明の行の自信度は、低です。
読みの列は、原文の列を消しません。読みだけを残すと、後から紙と照合できません。
旧字体をいまの字と並べる作業は、この3列の中ではしません。字形の対応が要る字は、旧字体の記事の表へ分けます。この表の原文には、紙の字形を残します。
自信度の付け方
自信度は、その行を今日どれだけ紙どおりに読めたかです。人の身元が確か、という意味ではありません。
| 自信度 | 付けるとき | 付けないとき |
|---|---|---|
| 高 | 行のすべての字が読め、読みに足した語が無い | □が1つでもある |
| 中 | □が1つだけ。または、読みが二つに割れて、両方を読みの列に残した | □が2つ以上。字数が不明 |
| 低 | □が2つ以上。字数が不明。行の区切りが紙の上で定まらない | 高や中と並べて、二つ書く |
二つに割れた読みは、スラッシュで一つの文にしません。読みの列に、改行で2つ残します。自信度は中です。一方を消して高にはしません。
道具が示した読みを、原文の列へ入れません。道具の出力を残すときは、読みの列の下に「道具」と1行足します。原文は、紙の字だけです。
書き方の例
次の3行は、書き方の例です。実在の戸籍でも、実在の依頼でもありません。自分の表では、この字を消してから使います。
| 原文 | 読み | 自信度 |
|---|---|---|
| 明治廿年三月二日生 | 明治20年3月2日生まれ | 高 |
| □□市へ転籍 | 市へ転籍。市の前は2字が空 | 低。□が2つ |
| 父 □田吉 | 父は田吉。姓の1字が空 | 中。□が1つ |
1行目は、廿を20と読んでいます。原文の列には廿を残します。読みの列だけを20にして、原文を消しません。日まで読めているので、高です。
2行目は、市の前が2字読めません。読みに市名を補いません。低です。
3行目は、姓の1字だけが□です。名の田吉は読めています。中です。姓を、いまの苗字で補ってから高にはしません。
もう1行、自信度を上げない例です。原文が「昭和十年」までで、月日の欄が紙の上で空なら、読みは「昭和10年。月日は紙に無い」です。1月1日を足しません。足していないので、字がすべて読めていれば高です。空欄を埋めた行は、高にしません。その行は作りません。
1行の切り方で迷ったとき
どこまでを1行にするかで迷ったら、その塊はまだ1行にしません。原文の列に、見えた塊をそのまま入れ、自信度を低にします。理由は「行の区切りが定まらない」です。
区切りが定まってから、塊を2行に分けます。分けた日を、その2行の余白に書きます。分ける前の低の行は消さず、使わない、と書きます。消すと、なぜ2行になったかが残りません。
縦書きの進む向きの説明は、親の記事にあります。この記事では、向きを決め直しません。向きが自分のメモと逆でも、原文は紙に見えた順で写します。見えた順を、左から右の横書きに並べ替えてから原文へ入れません。並べ替えは、読みの列でします。
今日の表に足さないもの
この3列に、次は入れません。
| 入れたくなるもの | 置き場所 |
|---|---|
| いまの字への仮の直し | 旧字体の3列。この表の原文は変えない |
| 父と母が誰かという判断 | 人物一覧。この表は1行の読みだけ |
| 読めない理由の長いメモ | 自信度のうしろの短い理由まで。長いメモは別紙 |
| 次に請求する本籍 | 請求のメモ。読みの列へ住所を補わない |
別紙の長いメモには、この表の何行目かを書きます。行番号の無いメモは、どの□の話か後から分かりません。
1日に写す行数は、決めなくてよいです。決めるのは、写した行に空の自信度が無いことです。自信度が空の行は、写し終えていません。空のまま次の行へ進みません。
低や中の行を、あとから高へ変える日は、紙を開き直します。記憶で□を埋めません。開いた紙で、□の位置の字が読めたときだけ、原文の□をその字へ置き換えます。置き換えた日を、自信度のうしろに残します。古い行は消さず、使わない、と書きます。
読めた字が、読みの列に先に書いていた推測と違うときは、読みの列を紙の字へ直します。推測の側へ、使わない、と日付を足します。自信度は、直したあとの□の数で付け直します。□が残っていれば、高にはしません。
集めた紙の読み取りと、図への整理は、できあがるものに書いています。
今週やること
- 直系の手書き戸籍から、1行だけを選ぶ。原文の列へ、見えた順で写し、読めない字は□にする。
- 読みの列へ、原文にある範囲だけを書く。月日や地名を足さない。
- 自信度を、高、中、低のどれか一つにする。空のままにしない。
よくある質問
読みが二つ浮かんだときは、どちらを残しますか
両方を、読みの列に残します。自信度は中です。決まった週に、使わない方へ「使わない」と日付を足します。原文の列は、どちらの週も変えません。
□を、それらしい字で埋めてから高にしてよいですか
埋めません。□が残る行は、高にしません。1つなら中、2つ以上なら低です。埋めた字を原文へ入れると、紙に無かった字が残ります。
道具が出した文を、原文にしてよいですか
原文にはしません。原文は、紙に見えた字だけです。道具の文を残すときは、読みの列の下に「道具」と分けて書きます。自信度は、紙の字と一致した範囲だけを見て、上の表で付けます。
まとめ
手書き戸籍の1行は、原文、読み、自信度の3列で残します。
原文の読めない字は□です。読みには、原文に無い語を足しません。
自信度は、高、中、低のどれか一つです。空の行は、写し終えていません。